〜騙されたこと〜


ニューヨークに来る前の年、エイビーロードという格安海外旅行ツアーの雑誌を見ていたら
NYにある「日米学生援護会」という会社の紹介が載ってた。
その会社は日本からNYに来た留学生の学校の事やビザの事、アパートの事などお世話をする会社だった。
わたしは日本からその会社に手紙を書いた。
内容は、来年NYに行きます。みたいな事と自己紹介。
その年の年末、手紙を書いた事など忘れた頃
その会社のオーナーらしき女性がわざわざNYからわたしの家まで電話をくれた。
NYに着いたらともかく会社に来なさい。いろいろと教えてあげるから。と言われた。
誰も知らないNYに1人で行く心細さでいっぱいだったわたしは嬉しかった。

次の年、95年4月にNYに来たわたしは、学校が始まって2日目 授業終了後、大雨の中
ランドセントラル駅の近くにある「日米学生援護会」へ出向いた。
その会社は雑居ビルの中にあった。なんだかとても暗い感じのビルだった。
入り口のブザーを押して、中に入った。そこは待合室で椅子と机。各種学校のパンフレットなどがあった。
その向こうにドアがあり、その奥がオフィスだった。
アンケートみたいな紙をもらい、現住所やら学校名やらを書かされ
約束時間を1時間以上過ぎた頃、やっと担当者のOさんという女性、
つまりNYから日本のわたしの家までわざわざ電話をくれた女性がやっと出てきた。
Oさんの第一印象は、ハッキリとモノを言うアメリカナイズされた女性。
だけどどこかうさん臭いオバさんだった。

わたしが通い始めた語学学校をけなして
ケンブリッジという語学学校がとても良いからそっちに転校しろと開口一番、言い出した。


まだ通って2日目でそんなことを言われても困るんですけど・・・・・


転校手続きは英語ができないと難しいから、こっちでやってあげるわよ。と言われた。
(ちなみに転校手続きは簡単にできるし、どこの語学学校でも日本人アドバイザーがいるので
英語ができなくても問題はない)
NYに来たばっかりのわたしはわからない事だらけで、Oさんの言う事をただただ聞いてるだけだった。

アメリカ人とのルームシェアーの紹介と転校手続きをやってあげるから。と言われた。
料金は500ドル。
学校は3ヶ月分の授業料をすでに支払っているので、転校は夏以降にしてほしい事を伝えた。
その日、わたしはお金を持ってなかった。
Oさんから

「銀行から小切手もらったでしょ。大きなお金は小切手で支払うのよ。その方が安全だから。
寮に帰って、小切手を持ってらっしゃい。書き方も教えてあげるから。」

と強引に言われ、雨の中、寮に戻った。
Oさんは、私が戻ってこない事を想定してか?

「鞄は預かっといてあげるわ。お財布だけ持って行ってきなさい。」

と言った。

私は言われるままに一旦、部屋に戻り小切手を持って、またオフィスへ戻った。
小切手の書き方などを教えてもらい、そこで500ドル払った。

言うまでもないが
その後、数件部屋を紹介してもらい見に行った所はお世辞にも「良い部屋ですね」とは言えない物件だった。

私は会社にクレームを入れた。担当のOさんは出張だかなんかでいなかった。
かわりにMという男性が電話口で

「ゆうこさん、あのね、そんなんじゃNYには住めないよ」

と訳の分からない事を言ってわたしのことを丸め込もうとした。
わたしは事務的に

「悪いけど、あなた達のやってる事は何も知らない日本人留学生を騙してるという事ですよ。
同じ日本人として恥ずかしくないんですか?
それとですね、私は顧客です。
Mさん、あなた態度悪すぎますよ。あなたでは話しにならないので責任者を出しなさい。
さもなくば出るとこ出て、戦いますよ」

と言った。

彼はうろたえながらもまだ言い訳をかましたので

「あなた、最低ですね。とにかくOさんに逃げてないで私の所に電話するように言いなさい。」

と言って、電話を切った。



それから1ヶ月。
Oさんからの連絡はなかった。
その間、定期的に会社に電話をかけたが、いつもOさんはいなかった。
私は別名を使い会社に電話をかけてOさんを電話口におびき寄せた。

「Mさんから私の事聞いてませんか?」
「あら、ゆうこさん。こんにちは。あなたから連絡がないからどうしたのか心配してたところよ。
M君がどうかした?」

と、すっとぼけた答えが返ってきた。
彼女の口調からは冷静を装い、何も知らないフリをしているのがミエミエだった。
私は紹介されたシェアーの物件が、言ってる事と全く違った事、Mの態度の悪さを指摘して
支払った500ドルを返してほしい旨を伝えた。
しかし、一旦支払ったお金は返せない事。
そのかわり、良い条件のアパートが出たら真っ先に紹介してくれること。
契約時には手数料から500ドルを引いてくれることになった。
しかしこの件も、言うまでもないが
紹介されたのはとんでもない物件ばかりだった。

余談だが、転校手続きは2年半後、自分で行った。



このようにニューヨークでは
日本から語学留学にくる学生は長くても2年くらいの滞在で帰国するから騙してもどうってことない。
とでも思ってるのだろうか?
来たばかりの英語ができない日本人留学生が
日本人留学生を相手に商売してる日系企業から騙される事が多い。
みんな少なくとも1回は騙されてるといっても過言ではない。
当時インターネットは一般には普及してない時だったので、情報源がなかった。
この会社、数年後
不動産部門を作り現在に至るまで派手に日本人を騙しているが、インターネットが普及するにつれ
ネット上の掲示板で匿名で叩かれてるところをしばし見かける。
最近、ちょっとは大人しくなっているが、悪い噂は後を絶たない。


日本人がよく騙されるのはやはり不動産関係。
わたしもアパート探しでは苦労したからね。
運良く? 騙されたのは後にも先にも1回だけだけど、
運悪いと、日系不動産屋とアパートの大家がグルになってて騙されることもある。
わたしが通ってた学校のクラスメートの女の子も来てすぐに4000ドルを騙しとられた。

次いでジプシーサイキック。
アメリカに来てまで?と思う人もいるだろうけど、マジで騙される人がいる。
数人、騙された人たちを知っているけど、
5000ドルから多い人で3万ドル以上も騙されてる。
よく考えれば嘘ってわかることも、その時はテンパッちゃってるからわからないんだよね。
次回はジプシーサイキックの罠についてお話ししましょう。