過去を見られる恥ずかしさ

「家が売れたから引っ越す事になった」と先日母から電話がありました。
わたしの実家は甲府駅から車で7分くらいの所にありますが、とても辺鄙な場所です。
もともと山だったところを切り崩して住宅街を作ったのでひな壇になっており、私の家は3壇目にあり一番上でした。
前回帰省したとき、さらにその上に家が数件建っていたのを見て驚いたのを昨日のことのように覚えています。
で、家にたどり着くまでにとても急な坂があり、日当たりが悪いので雪が積もったらアイスバーンと化して、1ヶ月くらい溶けません。
車は坂の下に止めとかなきゃいけないし、バイクや自転車はおりて引っ張ってかなきゃならず、必ず転ぶ人がいます。
バス停まで徒歩で30分ほどかかり、一番近くのスーパーまで徒歩20分。
生活も交通も不便な場所なのです。
母はスクーターに乗っていますが、年も年だし白内障だと診断されバイクともそろそろお別れのようです。
生活するのにスクーターに乗らなくても良く甲府駅にも徒歩圏内の場所に新しく家を建てたそうです。




私の部屋のテレビ、ビデオ、ステレオなどいらない電化製品を従兄弟にあげるからね。と言われ
「いいけれど、年金手帳や銀行の印鑑は持ってってよ」と母に伝えました。すると
「ところで机の中を見たけどあれ、なぁに?なんだか子供のおもちゃがいっぱい入ってるけど捨てていいんでしょう」と言われました。



子供のおもちゃ???


そうだ・・・・・ UFOキャッチャーで取ったドラえもん、おばQ、アンパンマンなど全部で10個くらいあり、
わたしの留守中に近所の子供にあげられては困るので、机の棚に保管しておいた私の大切なコレクション。
りかちゃんハウスのミニュチュア2つ。(これ、探しまわってやっと見つけたんだよね)
捨てられない大切なコミックス(ちびまる子ちゃん白鳥麗子でございますドラえもん柴門ふみさくらももこのエッセイなどなど)
レターセット、シールセット、Mr.ドーナッツの点数集めてもらえるオサムグッズの数々。
それと私はインテリアコーディネーターを目指していたことがあり、「コンフォルト」という専門雑誌が
1回パラパラとまくっただけで真新しく2年分キレイに並んでいるはずである。
二級建築士の資格を取った時に使ったテキストや製図を書く時に使う道具などまであり
雑誌やテキストなどは捨ててもかまわないけれど、どうか私のコレクションと大切なコミックス類だけは新しい家に持っていって欲しいとはもはや言えず・・・
コミックスに関しては、上記以外にも小学校2年生の時に初めて買ってもらい集めた「キャンディーキャンディー」全巻と写真集2冊。
中学生の頃流行ったあだち充「みゆき」「タッチ」「日当たり良好」全巻。
高校生の頃毎月買っていた「別冊マーガレット」のお気に入りコミックスなどなど合わせるとかるく200冊を超える。
それと映画のパンフレットたくさん。 「マンハッタンキス」のポスター。
「やっぱりネコが好き」の録画ビデオ数本などなど。全てゴミになると思うと切なくなりました。



母との電話を切って感傷に浸っていたそのとき、重大なことに気がつきました。
女の子ならだれでも思い出があると思うけれど
友達との「交換日記」や授業中ノートの端にメモ書きみたいに書いてまわした「手紙」
自分だけの「ラブリー日記帳」遠くに引っ越してしまった友達との「文通」
片思いしていた同じクラスの男子の「写真」(友達に隠し撮りしてもらったりするんだよね)などなど。
私はこれらティーンエイジャーの頃の思い出を黄色い鳩サブレの缶の中に後生大事にしまい込んで
クローゼットの中に隠しておいたことを思い出したのです。
この缶の中にはNY1年目の日記も入っている。NYに来る前の年の手帳も入れてあったはず。
わたしは中学校に入学した時から日記を書き始めて、
自分で言うのもアレですが、ティーンエイジャーの頃の私、特に中学生の頃の私の日記は非常にイタイ内容なのです。
友達との交換日記の内容もかなりヤバいです。
社会人になってからは、社長の悪口オンパレードで「恨み帳」と化した日記。
社内のドロドロとした人間関係を事細かに書いて社員一人一人を分析し
一人ほくそ笑みながら毎日、社内人間ウォッチングを楽しんでた日々の記録。
NYに来た最初の年もかなり変なことを日記に書いていました。



これらの「思い出」は、部屋の掃除なんかをしている最中に出てくることが多く、
しばし掃除を中断しては(そうそう。こんなことあったよね・・・)と
昔を懐かしく感じさせてくれるモノで
自分で書いたものを自分で見るのはいいけれど、他人、とくに身内に見られるのは恥ずかしさを通り越して
イタさを感じます。


「鳩サブレの缶の中身を見られてしまう」


この時ほど「どこでもドア」が本当にあったのならどんなによかったかと心底思いました。




その数日後、私の銀行口座からお金を下ろしてこっちの銀行に送金を頼むため母に連絡をすることになるのですが
電話一本かければ済むところ、缶の中身を見られたと思うと電話ができず仕方なく手紙を送りました。
普通なら母から「送ったよ」と連絡があるのですが、連絡がありませんでした。。。




(おかあさんめ、缶の中身を見たなぁ)





電話すれば次の日に口座に入金されたはずのお金は10日後に入金されました。